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ポルトガル便り・7便  左ハンドル運転事情

  日本の友人から「左ハンドルの運転は怖くないか。」と良く聞かれます。私の答えは「今でも怖いぜ!」です。それで今回はごく限られた経験からですが、こちらの車社会についてのレポートをお送りします。
  ポルトガルは総人口が約一千万人という小さな経済単位なので、国産車は存在しません。走っているのはドイツ・フランスの車が圧倒的に多く、その中で日本車も健闘しています。そして最近は“現代”や“起亜”など韓国の自動車会社が作った車も良く眼につくようになりました。車全体としての特徴は、型式の古い車が沢山走っている事・1200cc程度の小型車が多い事・マニュアルシフトが圧倒的に多く、オートマは例外に近いという事などが挙げられます。
  この国の自動車保有はこゝ数年に顕著な伸びを示しているのですが、逆に言えば自動車社会を支えるインフラは現在進行形であってまだ充分とは言いかねます。狭い道路を走り回り、小さなスペースを見つけて駐車させるには小型車が便利な事は明らかです。相当の幹線道路でも中央分離帯や防壁柵が無い道路が多く、最初は本当に冷や汗ものでしたが、これも慣れですね。今ではごく普通の気持ちで運転をしています。
  ところで駐ポルトガル日本大使館発行の“大使館便り”によると、「この国は世界で一・二を争う交通事故多発国である」として、次のような数字が紹介されています。
              ポルトガル    東京都 (2001年実績)
   人 口       約990万人    約1200万人
交通事故死亡者数   1466人    359人
東京都の発生率の約5倍となるポルトガルの死亡事故の発生状況について私はまだ何も知らないのですが、高速道路にからんだ事故の割合がかなり高いに違いないと考えています。こちらの高速道路は最高速度を一般に120KM/Hと規定していますが、これを遥かに超える速度で走る車が多く、常時200KM/Hに近い速度で走っている車が沢山有ります。道路の状況がそれだけの速度が出せる条件にあると言う事です。日本に居る時は有料道路は有るけれど高速道路ではなく、渋滞情報ばかりがお馴染みだったのが思い出されました。
  上記のように大変なスピード狂が多いという一方で、この国のドライバー達が大変に良くルールを守ると言う側面もあります。高速道路でリスボンに入る手前に、一方の道はテージョ河の上に架かる有名な4月25日橋に向かい、他方はリスボンの街外れに向かう二車線の分岐点が有ります。この橋に向かう道路は渋滞で有名な場所で、夕方の退社時間になろうものなら橋を渡るのに2時間・3時間もかかるという難所です。私達は夜7時に始まる音楽会に行く為によくその時間帯にそこを通るのですが、橋に向かう車線はいつも長蛇の列、他の一車線はガラガラです。日本的運転法でいうと片側のガラガラの車線をずっと進み、二本が分岐する場所で橋へ向かう車線になんとか横入りするという“気の利いた方法?”を取る人が必ず居るものですが、そういう状態を見た事がありません。いくら長く待たされようが自分の車線を確実に守ります。側道を使って前へ進む車もありません。狡賢く立ち回って得をしようとする考えは無用の人達のようです。
  (注)4月25日橋は1966年に作られた海上70メートル・長さ2278メートルの吊橋です。当初は独裁者サラザールの名前が付けられていたのですが、長年続いた独裁政治を覆した 1974年の革命の日を記念してこの名前に変えられています。橋の向こう側に出来た新興ベッドタウンへの車で大変混雑する事が多い所。
  ところで日本とポルトガルの交通事情の間で私が戸惑った大きな点は、“歩行者優先のルール”が実際に日常行われている事です。ポルトガルには“信号が無い横断歩道”が沢山ある事は、前にもお話したかと思います。私たちが住んでいるパレーディのような小さな町や、町と町とを結ぶ街道にもこの信号が無い横断歩道が数多く有ります。 そしてその横断歩道を渡ろうとする人影を見るや、走行している車が見事に停まります。止まってくれという合図など何もしなくても、“ここで止まらねば男がすたる。紳士の名折れ”と言わんばかりに車が止まってくれます。勿論女性が運転する車も止まってくれ、それは見事な事といつも感心する事しきりです。日本では強い者勝ちであり能率優先ですから、一人や二人の人影が見えてもまず車は止まらないでしょう。また面白いのはこの時横断する人達が、急いだりして自分のペースを乱す事が決して無い事です。お年寄りはお年寄りらしく念入りにゆっくり歩くし、おば様達はおしゃべりに夢中で停まった車など完全に無視して歩いて行き、車の側もごく当たり前に通り過ぎるのを待っています。日本の交通標語の“飛び出すな。車は急に止まれない”という考えを、多分彼らは理解しないでしょう。
  道路の使い方が日本とは異なっている例をいくつかお話しましょう。

a.一方通行の道が多い。慣れないととんでもない所まで行く破目になります。

b.二車線道路を一車線の一方通行にして、残りの車線を駐車スペースとして使う方式が一般的です。この狭い駐車場にお年寄りの運転者が上手に車を入れるのには感心します。

c.信号の代わりにサークル(ロータリー)を使って車の流れをコントロールする所が沢山あります。Uターンにも使えるし慣れると結構便利ですよ。車の数が少ないから機能するのでしょうね。

d.幹線道路で良く眼にするのが、Velocidade controlada 70KM/H(制限速度 70KM/H)という標識とその先にある信号です。この信号はいつも青なのですが、前述の標識の横を70KM/H以上の速度で通過すると、丁度その車のタイミングで前方の信号が数秒間赤に変わります。その結果全体の速度コントロールが出来ているようです。

  いろいろと書きましたが昨年の11月末に車に乗り始めてまだ4ヶ月半しか経っていないのに、実は私は二回も交通巡査のお世話になってしまいました。一回目はやゝ離れた始めての町に行って、Uターン禁止の所でUターンした時。二回目は私達が住んでいるパレーデイの町で、駐車違反だと言われた時。幸い二回ともこちらの説明が認められ情状酌量・無罪放免になりましたが、興味を引かれた事が一つありました。駐車違反を咎められた時に「妻(運転免許有り)が代わりに運転席に座りいつでも車を動かせる状態にあり、誰にも迷惑をかけていない。」という私の主張を認めて許してくれたのですが、この時に私は昼食時のワインの為に実は相当に赤い顔をしていました。この点を指摘されたらぐーの音も出ないところだったのですが、何も言われずに済んだ結果となりました。こんな事を喜んではいけないのですが、やはり土地柄なのかもしれません。それだけに気を引き締める事が大切です。安全運転の秘訣は“兎に角無理をしない。60-70%の範囲で運転する。”事だと肝に銘じています。   (征二)

 
       
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