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ポルトガル便り・6便  EUの仕組みはとても魅力的です。

  前回に引き続いて、12月にドイツを旅行した時の感想をお話させて頂きます。
  EUを作り上げて行こうとドイツ人が一生懸命努力している事が特に強く印象に残っています。ポルトガルにいるとEUに入っている便利さと同時に束縛のようなものは感じるのですが、ポルトガル人がEU全体の為に努力しているといった側面は全く感じられません。EU各国は統一した通貨を使っているので、ある国の物価変動が激しく、その国だけ通貨の価値が変わると困った事が起こります。そこで加盟各国は自国のインフレ率を年率3%以内に抑えようと約束をしています。昨年この国のインフレ率は3%を超えてしまったので、この状態が続くと罰金がかかるからなんとかして抑えこまなくてはいけないと、今この国はインフレ対策に必死です。また今年の文芸春秋1月号に載せられた阿川弘之の「ポルトガル再訪」にも書かれていたように、ポルトガルのインフラはEUの経済援助などの結果急速に改善されています。一方先進国ドイツでは、EUを作り上げる為に自分が犠牲になって他の国を援助するという局面がとても強い。そしてその役割を必死になって果たし・進めていると強く感じました。
  EUというシステムが動き出したので私達の欧州滞在が非常に快適になっている事は前にもお話したと思いますが、今回はその点を再認識した旅でもありました。なんと言っても通貨が統一されている便利さはとても大きなものです。皆さんも欧州を旅をすると国毎にお金の両替をし、通貨の単位を理解するために換算を余儀なくされ、残った小銭の処理にもう一度苦労された事を覚えておられる事と思います。それが一切なしに旅行ができる。そして物の値段が常に自国の物価と比較できる。ほんとに便利になったと実感します。その点からいうとドイツ特にハンブルグは実に物が豊富だが、同時にポルトガルと較べると物価が高い。“これじゃあ俺の年金ではやってゆけないよ”と悲鳴をあげてしまいました。私達がポルトガルに住まいを定めたのは正解だったと感じています。
  旅行をしてもイミグレーションが無いというのも気持ちの良いものです。(空港のカウンターで本人確認の為にパスポートの提示は要求されますが。)そして物流が相当活発になった結果、ドイツのスーパーでも寒い冬にもかゝわらず緑・赤・黄色などの野菜が沢山並んでいます。この国の冬の食卓は今では決して馬鈴薯だけではないはずです。これで言葉の違いが無ければ実に楽なのにと贅沢なことまで言いたくなりました。
  しかしこのEUのシステムを作る為にドイツとフランスが長年の反目を抑え協調し、他の経済的には遅れている国を支える為に、自国のエゴを抑制して行っている努力はとてつもなく大きいと感じます。彼らはその上にもっと貧しい東欧の国々を来年以降まだ仲間に迎え入れようとしているのですが、これは本当に驚きです。アメリカに対抗できる大欧州を作る・ローマ帝国の夢をもう一度見る・自国の隣には紛争の種を持ちたくない等のいろいろな理由があるのでしょうが、第二次大戦を行った事に対する反省とその為の償いをしようという決心が一番大きいのではないのかと私には思われました。

ベルリンの壁

  東西ドイツの問題は私が思っていたよりもずっと大きな課題で、まだ当分解決されそうもありません。西ドイツの人だけでなく東ドイツの人までもが「もう一回壁を作った方が良い」といった発言をしているそうです。西ドイツの人にとっては東ドイツの道路などインフラ整備の為に特別の負担を強いられているのですから、中には「以前の状態の方が良かった」といった発言があっても不思議ではありません。しかし助けて貰っている東ドイツの人までもがそういう発言をしている。特に若い人達にその声が増えているそうです。ドイツ人はご存知のように自己責任の考えが強く、自分で努力をして始めて一人前として認められるといった考え方が強いと思われます。ところが社会主義で育った東ドイツの人達は同じドイツ人でも、“まず政府が与えてくれる・政府が生活を守ってくれるもの”という考えがあるので、現在のこの競争には耐えられずなかなか職場が得られないようです。今ベルリンの人口の約三分の一は移民の人達と言われその大半がトルコ人です。西ドイツの企業家は働かない東ドイツの若者よりも、素直にそして一生懸命働くトルコ人の方を好んで採用するようです。就職口もなく取り残されてゆく東ドイツの若者とそれを目の当たりにする年寄りが、昔の方が良かったと発言したり、ネオナチに走ったりしているわけです。中国残留孤児や北朝鮮で青春を送らされたりした人達を迎える事に難しさを感じている日本に比べても、迎え入れる人数が多いだけにドイツが直面している問題はとてつもなく大きな課題だろうなと感じました。
  日本はどうなのでしょうか。経済状況が悪いと大騒ぎをしている事は世界中の人が良く知っていますが、その日本人の毎日の生活は今でも世界で指折りの水準という程物が豊富で又レベルの高いものでしょう。グッチを始めとする高価な商品の売れ行きも日本ではまだまだ根強いと聞きます。「今の生活の水準が少々低くなっても、そんなに騒ぐ事など何も無いではないか」と外に居る私などは思ってしまうのですがどうでしょうか。それより“こういう社会・こういう国を作ってゆきたい”という夢を日本の国として是非持ちたい・日本の若者に持って欲しいと、この欧州の状況を見て強く感じました。
  ASEANが行き詰まりを見せているように思えます。又中国との関係についても今後沢山の問題があると予想されます。朝鮮半島の緊張も心配の種です。、今の日本の一番の課題はもう一回経済成長の路線に乗ろうとする事にあるのではないと思います。混乱した世界状況の中で、日本はどのような立場に自分を位置付けるのでしょうか。アメリカとの友好関係は勿論重要ですが、結局日本はアジアの一国として生きて行く事でしょう。東南アジア社会のありたい姿を描き、その長期的な展望のもとでリーダーとしての役割を果たして行く事にもっと力を注いでゆくべきだと私は考えます。
  ドイツの人たちがEUの将来に夢を抱いている姿を見てポルトガルへ戻り、「日本の青年が将来に夢や希望を持ちにくい状況のままで、これ以上経済成長を目指すなどは、国の指導者が腐心する課題ではない。」などと異国の片隅で一人憤るようになりました。(征二)

 
       
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