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ポルトガル便り・第49便 テレーザさんの家族

アレックス・アンソニー・テレーザ・シルビオ

 足掛け10年のポルトガル生活の間に沢山の人との出会いがあり、お世話になってきました。その中の一人・テレーザさんとのお付き合いを振り返ってみます。


 私達は2001年8月に下見を兼ねてポルトガルに20日間ホームステイをしたのですが、その時に不動産屋のテレーザと知り合いました。翌年の2002年6月に実際に住もうとやって来た時には、彼女がパレージ町に海の見える素敵なマンションを見つけてくれていました。ご主人の名前はシルビオ。以前はエンジニアリング会社・ベクテルに勤めていたのですが、身体の調子を崩したので会社を辞め、家で設計・リフォームを手がけています。滞在申請・銀行手続き等々初期の煩雑で難しい手続きは、このご夫妻にすべて手助けして頂いています。彼らはポルトガル人ですが、モザンビク・南アフリカ・カナダと移り住んだのちに生まれ故郷のポルトガルに帰ってきたのです。外国で生活する事の大変さをよく知っている人達なので、自分達で手助けできる事はしてあげようと協力して下さったのです。


 2003年3月にテレーザさんの家族が我が家に遊びに来てくれました。私は子供達に会うのは初めてです。玄関を入り挨拶を交わした後すぐに子供達二人は、「お手伝いする事はありませんか」「これを運びましょうか」と台所に手伝いに来てくれました。お父さんもお母さんも仕事を持って忙しくしているので、自然に手伝う事が出来る子供達です。


 アレックスはまつげの長いパッチリとした目の持ち主で小学校5年生。お兄さんのアンソニーは中学の1年生です。その上に今はカナダに行っているお姉さんのアナが居ます。


 子供達と一緒に料理をしながら過ごそうと思い“お好み焼き”も作りました。ひっくり返す時に子供達は、最初驚いた顔をしていましたが後では面白がり、特にアレックスは「お料理を作るのは好きだ」と言いながら自分で焼いてくれました。テレーザは「野菜も沢山食べられるし、これはブランチに良いわ・・・」と好評です。


 どの料理も喜んで食べてくれたのですが、食後のデザートに手作り大福を出したのは失敗でした。ポルトガルには豆を甘く味付けする料理が無いので、多くのポルトガル人には甘い大福の味が理解できないという事を後で知りました。


お好み焼きを手伝うアレックス

 テレーザとアレックスに日本の着物を着てもらい、記念写真をパッチリ。楽しい一日でした。


 テレーザさん達が帰り私達夫婦で夕食を食べている時に、「雛あられを送ってくれたOさんに、ポルトガル人の女の子と男の子がとても喜んで食べてくれた事を報告しなければね」と夫に言うと、彼は「男の子二人だろ。サッカー選手にアレックスという人が居るじゃないか。」と言われてしまいました。テレーザも、アレックスの事を「いつもボールを蹴っている活発な子なの」と言っていたっけ。という事は私は男の子に着物を着せたという事になるのかしら・・・。でも私は女の子だと思うのだけれど。そういえばアレックスはかなり恥ずかしそうで、写真を撮る時にも男座りをしたので直したっけ・・・と自信が無くなり、かなり落ち込みました。それからというもの、私の人を見る目の信用はガタ落ち。「この間会った人とは違う人よ」と私が言おうものなら、「孝江さんは男の子と女の子と間違える人だから・・・。」と友人達にからかわれる始末です。


 ところが2005年7月のこと。シルビオが見目麗しく若くグラマーでワンピース姿の女性と一緒に街を歩いているのにバッタリ会いました。ひと通りポルトガル式の挨拶を交わし(親しい人と会った時には頬と頬をつけチュッとする)別れたのですが、夫は「今の若くて可愛い女性は誰だろう?」 「アレックスよ。」 「エーッ!」という事になり、立派に成長したアレックスのお陰で2年ぶりに私の名誉回復となったわけです。


 2006年の8月にアルガルベ地方のオリャウンに私達が住む事になり、シルビオが友人の運送屋さんを紹介してくれる事になりました。二人に会うとテレーザがすごい顔をしています。「近くに住んでいるテレーザのママが亡くなって、彼女は一晩中泣き明かしたのだ」とシルビオが教えてくれました。彼の紹介のお陰で、私達は市価の半額で引っ越すことが出来ました。


 2007年にはテレーザの一家が、私達が住むオリャウンの町の郊外に引っ越して来ました。(縁の有る事です。)シルビオがオリャウンでマンションの建売りを始めたのですが、その事業が軌道に乗りこれから次々にマンションを建設・販売する為に、一家でこちらに転居して来たのです。


 2011年12月 成長したアレックスとアンソニーとにやっと再会出来ました。シルビオとテレーザには何回か会う機会が有ったのですが、子供達に会う機会が仲々有りません。まずは昔と同じ順に並んで貰って、写真をパチリ! 


 アレックスはもう21歳。エボラという町で、建築の勉強をしています。グラマーな女性ではなく、小学校5年生の時のイメージに近い女性になっていました。兄さんのアンソニーは23歳。土木関係の大学を卒業し、研修をする会社を捜している最中です。日本の企業も候補にあがっています。耐震対策に力を入れている国で経験を積むのは良い事だとシルビオは考えますが、テレーザは地震と放射能の事を心配して反対のようです。「日本は大丈夫よ」と言ってあげたいのですが、そうは言えませんでした。お姉さんのアナはカナダで結婚して、4歳と2歳の2人の子供のお母さんです。このたびシルビオはブラジルで働く事が決まり(イタリアの会社が火力発電所を作るプロジェクトに参加する)、ビザが下り次第出発するそうです。ポルトガル経済も落ち込んでおり、建売り業界も苦戦しているので、彼の仕事もあまりうまく進んでいなかったようです。テレーザは夫と一緒に行くべきかどうかと思案中です。人生には色々なドラマが続いて行きますが、どんな事があってもテレーザの大きな声でコロコロと響く笑い声は、一家を明るく照らし続けて行く事でしょう。
2011年 12月 【 孝江 】

 
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