nitahara gallery

ポルトガル便り 第48便 リスボンでの個展


 6月にポルトガルを又訪ねたのは、こちらで私の個展が予定されていた為です。日本の原発に不安を感じたり、現在の政治家に嫌気を感じて日本を脱出したわけではありません。


 2009年にロゥレー市での個展(ポルトガル便り第38便)以来、絵の発表の機会に恵まれています。3年の間に日本を含め個展が7回・グループ展が8回になります。有難い事ですが少し忙しすぎました。それに付き合う夫はもっと大変だった事でしょう。


 今回はポルトガルでの5回目の個展です。リスボンの闘牛場の近く・元マカオ大使館の1階と地階を使用して開催しています。期間は9月26日〜10月28日で、時間は午前9時から夜8時迄です。

1階会場の一部

 ロゥレー市美術館と同様に、案内状・ポスター・オープニングパーティー・飾り付け・受付けなどをすべて会場側が受け持ってくれます。その上、20cm角のカタログ(作品の写真17点が入っている)を、300部作ってくれました。


 すべて無料です。好条件での個展です。(4月に開いた銀座での個展同様に、収益は義援金として福島へ送りたいと思っているのですが・・・・・。)


 マカオの絵を数枚会場に展示する事が使用条件になっていましたので、5月に取材旅行に行ってきました。

(右からマカオ代表のライムンドさん・ガブリエラさん・ミリタさんと共に)

 マカオはカジノの有る大きなホテルを更に数ヶ所建設中で、これから益々発展して行く様子でした。道路標識は中国語とポルトガル語とで書かれていますが、私達が接した人でポルトガル語を話す人は一人も居ませんでした。高層ビルの下に庶民の生活が有り、人々からはポルトガル同様心の暖かさを感じました。今回の個展の関係者に対する感謝の気持ちも込めて、マカオの絵は誰が見てもマカオだと判る、しっかりした形で描いてみる事にしました。


 マカオ側責任者のガブリエラさんはテキパキと要所を押さえ、きめ細かくどんどん仕事を進めてゆく、とても有能な人です。その反面、私がサンパウロ教会(マカオの世界遺産)の絵を描くのに苦戦している事を知ると、「その絵が無くても、貴女の個展は成功すると私は確信しています。」と力強く励まして下さる心優しい人でもありました。会場をすっきりしたものにする為に、常設している屏風を取り除いたり、他の飾り物を移動したり最大級の便宜をはかってくれました。彼女の指示のもと、関係者の人達も気持ちよく働いて下さるので、とても幸せな気持ちです。


 作品は23点を展示しました。私がいつも描く心象風景の中に具象のマカオの絵が4点入りましたので、いつもの個展とは又違った空間になりました。


 オープニングパーティーには日本大使館・中国大使館の方々をはじめ、60人以上の人が集まって下さり盛況でした。来客の女性詩人は「サンパウロ教会の絵は五つ星よ。」と言って下さり、他の人々も「貴女のブルーが好き」「水の中の魚は、本当に泳いでいるようだわ」と、それぞれ感想を述べられます。絵を通じていろいろな人との出会いがあり嬉しい事です。


サンタクロース作りに励むガイさん親子

 パーティーには、私がこちらで所属しているAAN(アルガルベ アーティスト ネットワーク)の仲間で元会長のミリタさんが、泊りがけでリスボンまで出かけて来て参加してくれました。AANの事やその仲間については別の機会に書く事にして、今日は私がこちらで仲良しになったミリタ一家を紹介します。


 ミリタは、高校生の娘(ジョアナ)と中学生の息子(トーマス)を持つママさんアーティストです。2才でフランスへ行き30歳でポルトガルに帰って来た人です。彼女は「私の心はポルトガル人。頭はフランス人。」と言います。家族の会話は、フランス語・英語・ポルトガル語を自由に使っています。ご主人のガイはフランス人でシェフです。友人と共同で、暖炉のある古い家を改造し古美術品を飾った、雰囲気の良いフランスレストランを経営しています。



 以前に、AANの有志でクリスマス昼食会をした時に、私が赤と白の折り紙を持参して、参加者にサンタクロースを作って貰った事があります。

娘のジョアナ

顔はそれぞれ自由にペンで描いて貰うのです。その時、特別参加のミリタ家の親子が明るいムードを作り、少しおどけて大いに会を盛り上げてくれました。折り紙の後にはジョアナの提案でゲームをしたり、とても楽しい会になりました。「明るくて仲の良い貴方の家族が、私は好きです。」と言うと「そう だろう。良い家族だろう!」ガイは胸を張ります。ミリタはニコニコと家族を見守っています。



 AANでもミリタは母親的な存在です。いつも温かく冷静で、話が脱線しそうになると頃あいを見計らって軌道修正してくれるなど、いつも真面目に事を進めて行きます。先日も我が家の車がトラブルで立ち往生した時に、イの一番に援助を申し出てくれたのがミリタでした。彼女は動きのある人物と集団に興味を抱いて絵を描いています。特に彼女の描く人物クロッキーは、リズム感が有り鉛筆の色も綺麗で、私は大好きです。
【 2011年10月・ 孝 江 】

 
 
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