ポルトガル便り・第42便 船の中でのワールドカップ観戦
去年の9月にロゥレー市の美術館で個展を開いたのをきっかけに、絵の発表の機会に沢山恵まれ、絵三昧の生活をしてきました。そんな毎日も小休止になり、地中海クルージングに出かけてきました。スペインのプルマンツール社の船です。乗船した7月10日はワールドカップの3位決定戦の日。翌11日はスペイン対オランダの決勝戦です。 その日の昼間の観光はモナコです。乗船客には赤のTシャツスタイルが目立ち、朝からスペインの優勝を願って勢い込んでいます。カジノの近くでオランダのユニフォームのオレンジ色を着た集団と出会い、握手をして互いの健闘を願う場面もありました。乗客は全員で2,600人。ロシア・スロバキア・ポーランド・スコットランドそして日本人(私達2人)も居ましたが、殆どがスペイン人です。船の夕食は通常は夜8時からなのですが、その日は7時から始まり、皆さん早々に食べて8時半から始まる優勝戦の観戦です。大スクリーンでサッカー観戦が出来る劇場(いつもの夜はショーが開かれる)はもちろん超満員。その他のカジノ、バーなどテレビが見られる所はすべて、赤いシャツを着た人・人・人。この日は応援者の赤に対して、スペイン選手は紺・オランダが赤のユニフォーム。赤シャツの人達が紺色を応援する姿が面白かったです。 私達は心の中ではオランダを応援する気持ちで参加していましたが、みんなの熱気と一喜一憂する姿に・・・。スペインがオセオセの試合をしながら点数が入らない場面に、いつしか私達もスペイン応援に切り替わっていました。スペイン人の陽気さも手伝って、ブーブーと応援笛は鳴るは、溜め息とブーイング。画面と一体になって賑やかな事です。 親は画面に釘付けですが、それに付き合っている子供達は退屈しきっています。
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親の気持ちが下の子供に全然無いのを気遣って、お姉ちゃんは妹の面倒を良くみます。長女とはなんとけなげな者かと思いました。1点が入った時の盛り上がり方は、それは大変・・・・。みんな総立ち。歓声の渦でした。(もちろん私達も。)その日の夜は興奮冷めやらず、いたる所で沢山の人が遅くまで優勝を祝ってお酒を飲んで盛り上がっていましたが、私達は早々に失礼しました。15日の観光では、チュニジアのガイドさんや市場の人達に“スペインおめでとう!”と言われ、皆さん満足気な顔で歓声をあげていました。 今回のクルージングは7月10日〜17日の期間でしたが、子供達・親達の夏休みと重なって、家族連れが多く参加していました。子供達は広い船の中を縦横に走り回ります。お客が室内に居る時は赤・不在の時には裏の緑のカードをドアに差しこんでおくシステムなのですが、部屋係りのカメリアさんは、「子供達がカードを引き抜いて何処かに持って行ったり、赤と緑とをひっくり返して差しこんだり。お客さんが居ないと思って部屋の掃除に入ろうと思ったら居たり、カードの役目を果たさないの。」と子供のいたずらに悲鳴をあげています。でも彼女は、明るくてバイタリティーの塊です。「子供達にとっては面白くて仕方ない事よネー」と明るく笑いとばし、仕事に励みます。いろいろな家族を見るのは楽しい事です。赤ちゃんの可愛いこと。私達も子供達にエネルギーを貰い、自分達が子育てに夢中になっていた頃を思い出し、かなり他の人に迷惑をかけていたなと反省したり、楽しい思い出に浸ったりしました。 私達がプルマンツール社のクルージングに参加するのは2回目です。前回私達の夕食のお世話をしてくれたホンジュラス出身の男性に再会しました。(ポルトガル便り29便)この船の食事係りは160人。私達のテーブルから世話係りの人を知りえるのは、せいぜい10人程度です。前回とは船もコースも違いますし、彼と再会出来たのは奇跡というしかありません。前回彼の相棒だったコロンビア人の事を尋ねたところ、「この会社の船で働いているとは思うけれど、今何処にいるかは全然知らない。」との事です。ホンジュラスの彼は、私達が日本人で数も少ない為か良く覚えていてくれました。
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仕事振りも3年前より自信に満ち堂々とした働きぶりでした。今回のお世話係りはルーマニア人のマリアーノさんとチャーミングなフィリピン人のアルリーンさんでした。アルリーンさんは「3回目の旅には私と再会しましょうね。」と言います。彼女は半年は船で働き半年はフィリピンに帰るそうです。四人姉妹の長女で一番下の弟は8歳との事。ここでも長女は頑張っているのです。 マリアーノさん・アルリーンさん・カメリアさんに感謝の気持ちを込めて、それぞれの名前を漢字で筆ペンを使って書いたカードを作り差し上げました。食事係りの二人は、その日の夕食に出た帆立貝の殻に寄せ書きを、カメリアさんは部屋にクッキーをそっと置いていってくれました。お返しなど思ってもいなかった事ですので、人と人との心の触れ合いを感じ、ますます幸せで温かい気持ちにさせて貰いました。 この船で働いている人は全部で763人。その国籍は31ヵ国でした。フィリピン人(157)・インドネシア人(131)が特に多いようです。その中に日本語が少し出来る素敵な女性が一人いました。15日(6日目)にアルブケルケ船長主催のカクテルパーティがありました。船長はポルトガル人で、その日本語を話せる女性はなんと船長夫人でした。私達がポルトガルに住んでいる事を話したところ、ご夫妻もポルトガルのカスカイス市に住んでいるとの事。
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通常は船長だけが記念写真におさまるようですが、私達は二組の夫婦でパチリ。奥様も気取らず、次の日もバスの手配の仕事に精を出していました。外国で頑張っているポルトガル人に出会うと、身内のような気がして嬉しいものです。後日、船長さんからメールを頂きました。素敵な奥様のお名前はグリーアさんでした。 2010年 7月 【 孝 江 】