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ポルトガル便り・第40便 合唱団での経験(その2)

 

今年の5月に地元の合唱団に参加して、もう半年が過ぎました。東洋人は私一人だけという環境ですが毎週の練習がとても楽しく、合唱団活動が再び私の生活の中心に座り始めた感じがします。

  クリスマスを迎える時期だという事もあって、11月と12月は催しが多く、毎週の練習以外にも4回のコンサートと若干の臨時練習、そして団の総会などがあり忙しい季節です。

客席の様子(文化センターで)

  コンサートは教会で2回、地元の文化センターで2回開かれました。ご存知のように教会の内部はドームのようになっている事が多く、音響効果が抜群です。礼拝堂一杯に声が広がってゆくのを感じながら歌うのは、とても気持の良いものです。また日頃神父さんが説教を行う祭壇に立って歌うというのも、面白い経験でした。ただ時にはキリエとかグローリアなどというお祈りの歌を歌うことがあり、この時には一寸戸惑いが有ります。教会で宗教曲を歌うのですから一番適している場所なのですが、聴いている人の多くが、その教会でお祈りをしている人達です。“キリスト教を信じていない俺が、この曲をこんな所で歌って良いものだろうか”と考え込んでしまいました。

  コンサートが終ると、二つの教会では何れも合唱団に対する歓迎のパーテイを開いてくれました。その教会に所属する善男善女の方達との、ワインを傾けながらの楽しいひと時です。私の場合は、まず一緒に歌う団員の人達との交流の場になりましたが、団員の多くの人達は教会に顔見知りが居るようで、クリスマスが近づくに相応しい賑やかなパーテイになりました。

  こんな事も有りました。その教会からバスまでの帰り道の事なのですが、指揮者のウオルターは、お医者さんが持つような形の、楽譜などが沢山入った大きな鞄を重そうに運んでいました。そして奥さんのパオラは、木で出来た指揮者用の大きな譜面立てを持って歩いていて、これも重そうです。男の出番だと思って、「パオラ、その指揮台は僕が運ぼう。」と声をかけたのですが、私の顔を見て、「ダメダメ。セイジは風邪が治ったばかりだし、私の方が力が有るから大丈夫。」たしかに私よりも彼女の方がしっかりした骨格だし、5人の子供を育てたパワーが感じられます。ドイツ婦人のエネルギー・逞しさの前に脱帽して引き下がりました。この合唱団には、大柄でがっちりとした女性が多く、彼女達は団の活動にもとても積極的です。

 

  今この合唱団は上り調子にあるように感じます。団員の数が少しずつ増えているし、団のホームページ( http://mundt.gmxhome.de/ )が出来たり、ステージに招待されるなど、活動が発展しているように思えます。先日、団の運営方法について話し合う総会が開かれたのですが、これも初めての試みだそうです。気の合った人が集まる仲良しクラブから、一般社会の合唱団への脱皮の時期のようです。初めてだという事もあって総会は自己紹介から始まったので、私にとっては好都合でした。日頃すぐそばで歌っている同年代のオランダ人・トムは、なんと8歳の時から教会の聖歌隊で歌ってきたという。今は面影も有りませんが、きっと可愛いボーイソプラノだったのでしょう。私も「高校生の時から始めて、もう50数年歌い続けています。」と言ったところ、隣に座っていた女性が直ぐに年の計算をし、ウインクをしてくれました。

バスの仲間たち

  私が所属するバスの仲間は、皆おゝらかな楽しい人達なので、私にとっては居心地の良い合唱団になっています。しかし合唱団活動に真面目に献身的に働くのは女性の方が多く、合唱団はしっかり者のご婦人に支えられている感じがします。コンサートとかパーテイとかの催し事が有ると、彼女達が自発的に雑用やまとめ役を引き受けてくれます。日頃おとなしく・目立たない女性が皆の前に出て、無駄の無い・ポイントを押さえた、それでいてユーモアのある話をしてくれます。この人はどんな人生を歩んできた人なのだろう。子供のときは級長さんだったのかな等と想像を巡らしたりしています。

  歌の選択や練習の内容については慣れたし満足しているのですが、人との付き合い・社交の方はまだまだです。練習場で顔を合わせる時、皆の顔がとても明るく楽しさに溢れているのが、この合唱団の特徴です。顔を合わせたらまずハグ(身体を寄せ合い、両頬を付けてチュッチュッ)をして、楽しいお喋りが始まる。この時には皆さん特に元気溌溂・本領発揮の瞬間かもしれません。この光景を見ているのは実に楽しいのですが、“沈黙は金”と教えられてきた日本男児には自然な対応が難しく、早々に練習場の隅に行き楽譜を開いてごまかしているのが現状です。

          

                                            2009年12月   【 征 二 】


 
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