ポルトガル便り 第39便 個展を終えて
35日間の個展が無事終りました。エスピリトサントギャラリーは、責任者のロザリオさん・受付業務をするパルミラとイザベルさん、そして飾り付け・運搬を担当するオスカーさんの四人のチームで動いています。ロザリオさんは何事もテキパキと決断して直ぐに実行する、仕事の出来る女性でした。大体においてスローペースで進んでゆくこの国で、彼女に出会えたのは幸せな事です。パルミラさんは親切で優しく、とてもよくお世話をして下さり、イザベルさんはおっとりとした人でした。オスカーさんは寡黙で、一人でモクモクと飾り付けをしてくれました。
受付では毎日の来客数をカウントしているのですが、それによると今回の展覧会の来客数は延べ1,317人だそうです。アルガルベ地域の新聞が大きく紹介してくれた事、まだ観光シーズンが終っていなかった事なども幸いしたと思われます。リスボン(300KM)やブラガ(600KM)からも、日本大使を始め友人達が観に来て下さいました。
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展示即売会の風景 |
最終日の10月10日(土)には、ギャラリーの傍の広場で、作者自身が店を出す絵と写真の展示即売会が、市の企画で行われました。ロザリオさんとイザベルさんは大忙しです。私の個展も時間延長で、土曜日は午後2時なのに夕方6時まで開かれていました。天気も良いし皆さんお祭り気分なので、私達もお茶を飲みながら仲間に入って楽しみました。私もラオルさんの写真を 1枚買いました。
個展会場には私も時々顔を出しましたが、行くたびに良き人との出会いが有りました。フランスからのご夫妻は「パリにビクトルユーゴーの家があるのですが、その家に彼が描いた海の水彩画が数点飾られています。貴女の絵を観ていたら、その絵の事を思い出しました。時代も又住んで居る場所も遠く離れているのに、共通点を見出すのは面白い事です。」とのお話でした。そして後日、ユーゴーの家に飾られている絵の写真をメールで送って下さいました。またオランダ人の女性は「私も波を描いているけど、こんな描き方は出来ない。貴女に会えて良かった。」と言って下さいました。
ポルトガル人からは「アレンテージョを、何故黒で描くのか?」という質問が多く出ました。ベルリンで個展を開いた時にも感じたのですが、東洋の人間と西洋人とでは、黒に対するイメージがかなり違うようです。少し変りつつあるようですが、ポルトガル人は黒の洋服をあまり着ません。ナザレという地方では、未亡人が日常黒の服を着る習慣があります。(年寄りは今でもきちんと、その習慣を守っています。)市場を取り仕切っているジプシーの人は、男女共に黒装束です。
個展を開くという事は、集中して絵を描き、その絵を会場であらためて一同に観ることが出来る貴重な場です。今回は広い会場に展示出来るだけでも有り難いと思っていたのに、絵が数点お嫁入りしました。
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第1室 |
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第2室の左半分 |
日本で個展を開いた場合、友人・知人が私を応援する気持を込めて絵を買ってくださいます。(お陰様で個展開催が続けられています。)こちらでは、私の事を全く知らない人が、絵を気に入って買って下さるのですから、大変な事です。
Aさんは、絵が好きでまめに画廊巡りをしている人でした。絵の事を良く知っている人です。Bさんは6歳のお嬢さんを連れた女性です。130 x 162 cm の大きな絵を買う決心をするまでに何度も会場を訪れ、また私のホームページを見て研究したと言っていました。買う人の、絵に対する真剣さ・良く勉強している事が伝わってきて、自分の感性をもっと磨いてゆかなければと痛感し、大きな励ましを頂きました。
今回の個展は沢山の人に助けられ親しい人も増えて、私にとって大きな記念になりました。ロゥレー市の街を歩くと、親しげに手を振ってくださる人が出てきました。きっと私の展覧会を観て下さった人だと勝手に解釈し、私も手を振り返します。日本人の居ない町ですから、私達は目立つのでしょう。オリャウンの町でも店頭に私の案内状を貼って下さったり、いろいろな人が応援して下さいました。
その中の一人・画材店のアナマリアさんは「昨日テレビでラストサムライの映画を見て、貴方たちの事を思い出していたのよ。ところで、個展の資料の中に愛について書いてあったけれど、この点でのキリスト教と仏教との違いについて、ゆっくり時間をとって説明をして欲しい。」と夫に頼んでいました。夫は自分が作った資料を熱心に読んでくれた人が居て、反響があった事に喜んでいますが、これは大変なテーマです。今後どのように発展して行くのでしょう。
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第4室と第3室 |
私の絵は、来年の4月ごろアルブフェイラ市企画の個展が開ける事になりそうです。他にも個展を見て下さった画廊の人からも個展開催の依頼があったり、グループ展の予定もあり、暫らく絵三昧の生活になりそうです。有り難いことです。こんな機会は滅多に無い事ですから、頑張ってみます。
2009年 11月 【 孝 江 】