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ポルトガル便り・36便  波止場の喫茶店

 この町の船着場に続いて、緑の多い公園がある。更にこの公園に続いて、市が運営する公設市場が2棟あり、東側が野菜・果物市場で西側は魚市場になっている。一寸アラブ風の趣のある建物です。フランシーリアさん(33号)はこの建物の中で日曜日以外には毎日店を出しており、ビトーリアさん(30号)やローザさん(35号)は、土曜日だけ建物の外で開かれる青空市場に参加しています。
公設市場・土曜日の青空市場 そして公園

 私達の家から歩いて5分足らずのこの公設市場の海側は眺めが良く、多くが喫茶店や軽食店・バーなどになっている。毎週何回も出入りしている“パステラリーア ベラ”もその中の一軒です。オーナーの名前はベラ。名前の通り美人の女主人。相棒はイルダという名の、笑顔が愛らしく肝ったま母さん風のお姉さん。二人共私達の娘の年代で、気持がよく明るい働き者です。さて私達がここによく通っている理由は何なのだろうか。 

1.海の景色が素晴らしいので、のんびりとゆったりした気分に成れる事。  海と言ってもこの辺りは浜辺ではなく、船も停泊できる小さな岸壁になっていて海水浴場はありません。100メートルぐらい離れた所にはヨットハーバーが有り、船の名前や旗から、何処から来たヨットなのかを知るのも楽しみの一つです。

オリャウンの町とその前の干潟

 この岸壁から4KMぐらい沖に出た所には、海を遮るような形で横に細長い島がいくつか連なっているので、その内側は干潟になり、国立公園でもあり貝類・鳥類の楽園です。潮の満ち干で全く姿を変える景色を見ながらエスプレッソコーヒーを楽しむ時に、オリャウンに住んでいる事を実感します。
2.地元の雰囲気を満喫できる事。
 先程お話した通り、この市場の周辺には沢山の喫茶店・レストラン・バーなどが並んでいます。そして多くのお店は、この町にやってくる観光客相手の商売をしているので、表面の愛想は良いし店も奇麗なのだが、どうしても心の通じない通り一遍のサービスでしかない。  私達が通うベラはこの点が大きく違う。お客さんの大半が地元の人で、その中に観光客が混じっているといった感じです。勿論外人も沢山来るが、その大半が私達のような定住した外人、或いは毎年決まった季節を此処で過ごすリピーターの外人達です。

公設市場と喫茶店ベラ

店は朝早くから夜まで二人が交代で働いているので、決していつでも愛想が良いわけではありません。時には疲れて不機嫌丸出しの事もあるけれど、根が良い人達だと判っているので気になりません。旨いコーヒーさえ出してくれれば後は景色を楽しめば良いわけです。  昨年の5月末に、例によって海を見ながら二人でコーヒーを飲んでいる時に、「ベラさん。今日は僕達の43回目の結婚記念日なんだよ。」と口を滑らせたところ、二人とも大喜びで店の奥から飛び出してきて、私達の頬にお祝いのキスをチュッ!チュッ!としてくれました。その頃私達も“この店の準会員にはなれたかな(勿論会員制などはとっておらず、気持だけの問題です)”などと言っていましたが、滞在が3年近くになった最近は、もう正会員になった感じです。


 たとえばこんな事もありました。丁度昼時だったので「今日はランチが食べられるかな?」と聞いてみました。この店でランチを食べる人はごく限られているので、いつも余分を作っていない。以前同じように聞いた時には「予約してくれないと、ランチの余裕は無いのよ。」と言われた記憶があります。ところが最近は「判った。何とかするから、座って待っていて。」と言ってくれ、実際昼食が出てきました。どうやらお客様と自分達用の中から少しずつ削って私達に廻してくれたようです。昼でも夜でも沢山食べるポルトガル人と違い、少食の日本人なら大丈夫との判断も出来るようになったのでしょう。ベラのお客さんや常連の漁師さん達とも友達になりました。このパステラリーア ベラは私達の社交場にも又情報源にもなっています。

イルダ

 肝っ玉母さんタイプのイルダは二児の母。勿論煙草も吸うし、力の強そうな漁師のおじさんにもガンガンと対等以上の話しぶりなので、「若い時に君は単車を乗り回す暴走族だったのかい?」と聞いたところ、「とんでもない。私達の時代、女の子は結婚前には一人で表も歩けなかったし、男の人と自由に話も出来なかったのよ。」という返事でした。彼女が18歳というと1981年頃でしょう。4月25日に起こったカーネーション革命が1974年の事で、革命前のポルトガルは、“自由の無い封建社会みたいな国”だったらしいから、まだそんな時代だったのかも知れません。「今の子供達はふんだんな自由があるけれど、年長者を尊敬する事をまるで知らない。」と日本人と同じ嘆きを語っていました。

ベ ラ

店の主人であるベラは現在独身でやはり二人の子持ち。一日中本当によく働く。もう18歳になる娘もいるのだから、 もっと子供達に手伝わせれば良いと思うのだが、ポルトガルの親は本当に子供に甘い。 子供をスポイルしてしまうだろうと、心配でなりません。

「家族なのだから、自分一人で引き受けてしまうのが良いわけでは決してないんだよ。」と口まで出かかっているのですが、まあ余計なお世話に違いない。海を見ながら、今日も静かにコーヒーを飲んで帰ってきました。



ベ ラから見る海の景色
















2009年 5月   【 征 二 】
 
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