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ポルトガル便り・35便  ローザさんのお店

 ポルトガル便り33便(お財布事件)を征二がポルトガル語に翻訳し,フェルナンドさんに添削して頂いた。フェルナンドさんは、日本で20数年エンジニアとして働き帰国したポルトガル人です。そしてそれをフランシーリアさん達に配ったところ、「奇麗な文章でとても嬉しかった。もっとコピーが欲しい。」と照れながら彼女は言ってくれました。それ以降、時々手伝いに来る娘さんをはじめ、親愛の情を示してくれる人がより多くなりました。
 今回は、土曜日の朝から午後1時ごろまで開かれる青空市場の、アントニオ・ジョゼさん、アナ・ローザさんご夫婦を紹介します。
 一番最初は彼等のお店でトマトを買いました。そのトマトは形も不揃いでデコボコだけど“真っ赤で沢山太陽を浴びて育ちました”といった感じの物でした。人との折衝は奥さんが一手に引き受け、細かい計算の時はご主人の出番です。更に難しい計算になると二人で頭を寄せ合って・・・。その姿が微笑ましく思わずカメラでパチリ。

一週間後にジョゼさんに「小さなプレゼントです」と言って出来上がった写真を渡しました。彼は私の言葉が理解できなくてキョトンとしています。その日買い物が終わり、彼らのお店の前を再び通ると「さっきは有り難う。」と笑顔で二人が手を振ってくれました。
 その後市場に無花果(アルガルベ地方の名産品)が出回るようになりました。彼等の店にもあります。「1キロ下さい」と言うと、ローザさんがビニールの袋に次々に無花果を入れます。「1キロよ」と私が言うと、「判った判った」と彼女は言いながら、どんどん入れてゆきます。一向に秤にかける様子がありません。心配になった私が又、「1キロよ」と言うと、「この間写真を貰ったから、これを持って帰って」とプレゼントしてくれるのです。「そんなの・・・」「いいよ、いいよ。持ってって。」傍ではジョゼさんがニコニコ顔です。
 それ以降もローザさんのお店で買物をしたいと思うのですが、私が欲しい物とお店で売っているものとが一致しません。
 ある日干無花果を売っていました。これは私が欲しい物です。ローザさんが言うには「よそから仕入れた物を売っている店もあるけど、私の店では私達の家か娘の家で作った物だけしか売っていない。この干無花果も太陽を一杯浴びて出来ているよ。」と自信たっぷりに胸を張って言います。どうりで売っている物の種類が少ない訳が理解できました。彼女の店を見ればオリャウンでの作物づくりの四季が判ります。

  或るとき、サングラスをかけた素敵な若者がローザさんのお店の中に立っています。「これは私の自慢の孫なの。この子が居てくれて私はとても幸せ。」お孫さんと腕を組んでローザさんは優しい笑顔です。そこで一緒に写真を撮らせて貰いました。後日ローザさんの店で買物をした後(買物の前に渡すと代金を受け取ってくれないので)、お孫さんと一緒の写真を額に入れてプレゼントしました。「インゲンを持ってゆく?」と言いますので、「とんでもない」と辞退し他の店に買物に行きました。20メートルほど行ったところで、後ろから肩を叩く人がいます。振り向くとローザさんがインゲンを沢山入れた袋をさげて追いかけて来てくれたのです。素直に頂いておけば彼女を走らせないで済んだのに悪い事をしました。
 私が風邪で寝込んだ時には、夫が熟し柿をお見舞いに貰ってきました。(この柿は甘くて美味しかった・・・。)ジョゼさんローザさん夫妻とのお付き合いは、私の田舎(岡山県津山市)での昔の人間関係を思い出させてくれます。
 ポルトガル便りにお二人の事を書きたいのでと、お話を聞きました。
アントニオ・ジョゼさん78歳、アナ・ローザさん71歳。49歳の娘さんとお孫さん二人(自慢の孫は18歳でした)。毎週土曜日だけ市場で作物を売る。前の日に準備は殆んど終っているが、当日は朝2時半に起き、朝早く買い物に来るお客さんも居るので、5時頃には市場に着く。(12月中旬のこの地方では日の出は7時半。6時半でもまだ真っ暗です。) 普通の日には6時ごろに起きる。5日も6日も雨が降ると、農作業が出来ないので困る。作物はオレンジ・アーモンド・玉葱・そらまめ・馬鈴薯などなど、いろいろな物を少しずつ作っている。
 「今年は6月に結婚50年を迎え、同じ月に孫(女の子)が結婚して、良い年だった。50年健康で居られた事が何よりの幸せだと思っている。」と答えてくれました。
 市場で買物をする人は、どの時期にどの店に行けば美味しいものが手に入るかを、皆んな良く知っています。(イチゴはあの店・ぶどうはこの店というように。)ジョゼさんローザさんの店も、二人の人柄もあってお馴染みのお客さんを沢山持っています。

 市場は朝早くから立ち詰めでかなりきつい仕事だと思いますが、一週間に一度いろいろな人に会ってお話が出来る楽しみもあるのでしょう、ローザさんはいつも生き生きとして仕事に精を出しています。ジョゼさんはそれを優しく見守って、困った時忙しい時には、さっと手助けをする。二人の息が合ってとても良いコンビです。店が終って片付けの時も、二人の息はピッタリ。商品台を分解して車の上に乗せ紐をかけ、手順どおりにゴミ一つ無い状態にします。よく働きます。

 お二人もクリスマスには娘さんの家に、お孫さん達や皆が集まり、新年はジョゼさんの家に皆さんが集まるそうです。さぞ賑やかで楽しい集まりになる事でしょう。
 皆様にとりまして、新しい年が良いお年でありますように。

 2009年1月 【 孝 江 】

 
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