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ポルトガル便り・32便  欧州選手権大会・EURO2008

   2004年から4年の時が過ぎ、またサッカーの欧州選手権・EUROの年がやって来ました。サッカーに強い関心が有ったわけでもなく、また馴染みの選手が居るわけでもない。まして日本は参加していない。それなのにEUROの大会が何故こんなにも気になるのか・楽しみなのか、本当に不思議です。
  前回はポルトガルで開催されたのでスタジアムで見る機会もありましたが、今回はスイス・オーストリアの共催です。偶々期間中にスイスの山に行く機会がありましたが、入場券が簡単に手に入るわけでもなく、会場へ行く事は諦めました。然しテレビは毎日見ました。予選リーグは一日2試合あり、テレビの中継はそのうちの1試合のみでしたが、毎日欠かさず見ていました。そしてベストエイト以降の試合は、毎日テレビの前に釘付けです。
何故この大会がそれ程面白いのだろうかと、理由を考えてみました。
その1. 凡戦が非常に少ない。イギリス(イングランドもスコットランドも)・デンマーク・ベルギーなど伝統を誇る国でも予選を通過出来ず、本大会に参加出来ないくらいですから、どの試合もレベルが高く見応えがあります。

その2. 引き分けが非常に少なく、どのチームも勝とうとして攻撃的な試合展開をしてくる。専守防衛で、あわよくば後半にフリーキックで1点を狙うなどというミミッチイ試合を見ないですむ。(今回の大会では全31試合中、引き分けは3試合だけでした。)

その3. スピード感のある試合が多い。特にドイツ・チェコそしてオランダなどのチームは、全員が実によく走る。肉弾相打つといった試合に、特に爽快感を覚えました。私は勿論ポルトガルを応援しているのですが、この視点からみると迫力に欠け、大分物足りなさを感じます。ぶつかった時に跳ね飛ばされているのは、いつもポルトガルの選手だ。
その4. 審判の判定に従うというルールが徹底している。テレビの再生を見ても、まず90%は誤審という判定であっても、審判の判断どおりに試合が進められ混乱がない。また場外での雑音もない。
その5. 狭い欧州の中に国がひしめいているわけなので、サッカーの試合といっても国と国の歴史を感じさせる組み合わせが多く有る。今回の大会でクロアチアが2対1でドイツに勝った時など、クロアチアの国内はさぞ沸いた事だろう。

 今回のEURO2008で特に感じた事ですが;
その1. ゲームそのもので感じた事は、守る側の寄せの早さと攻める側のパスの速さです。  球を持った選手に守備の選手が寄せてゆくのは当然ですが、更に球が次に出そうな選手に対しても、すごい速さで守備側が寄せてゆく。ドイツなどのそのテンポの速さに驚かされました。  また攻める側では特にスペインの球回しです。見方同士の球まわしでも、その球の速さと強さは驚きです。日本のチームだと身内の選手の足元に柔らかく受け易い球を送るケースが多いが、全く違う。強く誰にも取られない球を、足元ではなくその先にどんどん送る。それもワンタッチのボールが多い。実に早い展開です。 その2.予選リーグでは好調で余裕綽々だったポルトガルが、不調にあえぎ辛うじてベストエイトに滑り込んだドイツに負けてしまいました。まさかの敗退です。これはサッカーの技術や戦術の問題ではなく、民族性の問題に違いないというのが私の感想です。シャイなポルトガル人は、敵愾心をあらわにして襲い掛かってくるドイツなどに対して、心の何処かに怯むところがあるように感じられてなりません。負ける筈もない相手に負けてしまい本当に悔しい。しかしこういう民族だからこそ、遠いアジアのはずれから来た、容貌も違い言葉も不自由な私達を受け入れてくれるのだなと納得もしています。
  最後に得点不足に悩む日本のサッカーについて、一言。“赤信号、一人で渡れば怖くない。”私はこの標語に尽きると考えています。
 日本は国土が狭く、しかし人口が多い。たまに日本に帰り東京の街に居ると、この狭い所によくこれだけ沢山の人が生活しているなと感歎しきりになります。協調性に富む農耕民族だから何とか住んでゆけるので、欧州や中東の人達だったら、とっくに爆発しているのではないだろうか。こういう思いをする事がよくあります。交通ルールについても、同じ思いがあります。ずーっと見渡しても車が来ない交差点で、赤信号だと人が渡らないのは日本だけだと思います。多くの外国の都市では、「車が来ないと判ったら、待たずにどんどん渡る。」これが常識です。ポルトガルでも小さな子供を連れたお母さんが「さあ、渡ろう!」と子供を促す光景をよく見ます。
  “信号を守って渡る、僕達は。”日本の小学生の標語です。
“赤信号、皆で渡れば怖くない。”日本の大人達の行動基準です。
然しこれでは日本のサッカーは決して強くなれません。今の日本の選手達は、まだ約束事を実行するのに汲々としている。後生大事に約束に基づいた展開をしているだけでは、ゴールは見えてこない。監督やチームとの約束を破って、誰もが予測もしない動きが必要なのです。小さい時から仲間はずれを恐れ、常に仲間との約束に基づいた行動をとってきた人には勇気が要る事でしょう。しかし勝つためには自分の判断で自分の責任で、赤信号でも決断して渡るような行動をとらなければならないのです。“赤信号、一人で渡れば怖くない。”今後はこれで行きましょう。             2008年 7月 【 征二 】

 
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