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ポルトガル便り・28便  我が街・オリャウン

 オリャウンは古くからの漁師町で、今でもその魚市場はとても有名です。25便でもお伝えしましたが、毎週土曜日の午前には野菜・果物の青空市場も開かれるので、近隣からの買物客・買付客も多く人でごったがえし、市場の中を歩くのもまゝならないという程の盛況です。品数も又種類も豊富・新鮮さは抜群・値段も安いときて、私達のこゝでの生活の中心に位置づけられています。
 オリャウンの町を歩いていて感じる事の一つは、街があまり清潔とは言えない事です。特に犬にとって天国であり、その数がとても多い。以前住んでいたパレージの町では、飼い主が犬をつないで一緒に散歩する姿をよく見かけました。しかしこゝの犬達は紐に繋がれている訳ではなく、 といって野犬でもない“野放しの飼い犬”が 街じゅうを自由にのそのそと歩きまわり、また寝そべっています。その結果何処に行っても道路にはお饅頭とお煎餅がごろごろしている。饅頭とは勿論犬達の落し物であり、煎餅とはそれを自動車が轢き伸ばし・乾いて転がっている状態の事です。町には道路清掃のおばさんが居て、毎日必ず掃除をしてくれるのですが、このお饅頭とお煎餅は彼等の清掃の対象ではないらしく、清掃の後でも必ず残っている。漁師街なのでたゞでさえ匂いの強い街中に一層強いインパクトを与えており、一方犬達はのんびりと幸せそうに暮らしています。この落し物は乾期の夏場はまだしもなのですが、雨期の冬場は大変です。よほど歩行に注意をしなければ、とんでもない事になる。勿論私もその経験者の一人なのですが、道を急ぐ若者が踏みつけてしまい、困惑を抑えてニヤリとするのも良く見る光景です。飼い主の目の前で飼い犬が用を足した時でも「あらまー。」と困った顔はするものゝ平然とそのまゝ通り過ぎてゆく人が殆んど。驚きもするし困った事です。
 驚いた事といえば最近こんな経験が二つありました。一つは自動車税を市の財務局に払いに行った時のことです。以前住んでいたパレーディ町で支払いをした時には、納税者が定形用紙に記入し先方が内容をチェックした上で、税額を確認し支払いを終えた。然し今回こちらでは何の記入も要求されない。その代わりに一切の書類の提出を求められた。そしてその書類を見ながら係りの人が、必要事項をパソコンに全部インプットしてゆく。だから窓口でべらぼうに時間がかかり、長い行列が出来てしまう。何故こういう方法をとるのか聞きそびれたので本当のところは判らないが、若しかしたらこういう事情があるからかもしれない。40年近くも続いたサラザール政権(1932~1968)の間、庶民の教育は意図して極端におろそかにされ、結果として今60歳を越える年齢層には、文盲や計算が苦手の人達が沢山居るとよく聞く。この税金の支払い方法にもそんな事情が影響しているのかもしれなと感じたのだが、どうだろうか。
 一年前にこの町を訪ね住む家を探した時に、今住んでいる家のすぐ側で駐車場ビルの建設が進んでいました。広い敷地の地下を掘って、如何にも大きなビルが建ちそうでした。「家の側にこんなビルが建っては、折角のオールドタウンの雰囲気が損なわれ残念だな。屋上からの良い眺めも随分遮られる事だろう。しかし家を買うわけではなし、嫌になったら出ればいいさ。」という訳で、ここに引越してきました。驚いた事のもう一つとはこの事なのです。その駐車場は今ほぼ完成して稼動を目前にしています。
〔地下が駐車場になった広場〕
なんと駐車場は地下のみで、地上は芝生が植えられた広場です。工事が終わったら町には広がりができ、緑が増え雰囲気が一層良くなりました。日本では考えられない土地の使い方ですね。そう言えばリスボンでも路上の駐車上も有りますが、それを別にすると駐車場の殆んどは地下にあり、その地上部分は広場になって います。大抵は真中に銅像が建っていて、市民の憩いの場です。
 一方で「この町も普通の町になってきたな」と残念に思う事も多くなりました。EUに加盟した以降のポルトガルは、道路を中心にインフラがとても良くなっています。人々の動きも増え又商品の動きが格段に活発になりました。外国資本のスーパーマーケットがほうぼうに店舗を進出させ、この動きに拍車をかけています。その結果スーパーの棚に並ぶ商品はとても多彩になりましたが、同時に街に立ち並ぶ広告の看板が増えてきました。他の国に較べポルトガルの町は広告看板が少なく、広がりを感じとても気持ちが良かったのですが、首都から遠く離れたオリャウンの町でさえ、看板がどんどん増え、便利だけど美しさの無い“普通の町”になってきています。古き良きポルトガルも落城寸前。ポルトガルの自然の美しさや素朴な人の良さが無くなり、“便利で快適だけれど、潤いの無い・皆が同じ生活をする”町になりそうです。2007年 8月 【 征二 】

 
       
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