ポルトガル便り・25便 市場のこと
寒中お見舞い申し上げます。 新しい年を幸福で恙なくお過ごしになりますよう、心からお祈り申し上げます。
ポルトガルで生活を始めて四年半がたちました。オリャウンで生活を始めて五ヶ月が過ぎようとしています。リスボン近郊の都会的な雰囲気とは異なり、下町生活にもかなり慣れてきました。この町の迷路のような道は同じ道を何度歩いても、進行方向を変えるだけで異なった風景になり飽きる事がありません。
新年を迎える大晦日の夜は、こゝオリャウンでも零時前から海辺(小さな波止場)にある公園に人々がシャンペンとコップを持って集まってきます。そして除夜の鐘ではなく打ち上げ花火を見ながらシャンペンで乾杯をして新年を迎えます。知人夫妻に「日本ではお寺で除夜の鐘を鳴らすのだけれど、それは人が持つ煩悩を捨て去る為に108回鳴らすのよ。」と説明したところ、「日本人(仏教徒)は、随分沢山の欲望や執着を持っているのですね。」という返事が返ってきました。日本と同じで1月1日は街の中はシーンと静まり返っています。(元旦だけが祭日で2日からは普通どおりの生活。)
今回はこちらの市場の様子をお知らせします。リオデジャネイロ(ブラジル)の市場・カスカイス(ポルトガルのリスボン郊外)の市場などを私達は楽しんできましたが、この町の市場も素朴で楽しく二人共とても気に入っています。公設市場は日曜日だけが休み。
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海辺の公設市場 |
オリャウンは漁師町なので飛びきり新鮮な魚が手に入る事は前にも書きましたが、青空市場の野菜も太陽を一杯浴びて良く育ち甘みのある美味しいものが安く手に入ります。売り手のおじさん・おばさん達は皆近郊に住み、自分達が作っている果物や野菜か、周辺の人達が作っている物を持ち込んで売っているようです。勿論私達は彼らの生活ぶりをよく知っている訳ではないのですが、顔に刻まれた皺・働き者のガッチリとした手・その人達が駆け引きなど全く無しに対応してくれる姿などから、実直で正直な人柄が良く判り気持ち良く安心して買物が出来ます。(1974年のカーネーション革命迄42年間も続いたサラザール独裁政権の時代の人達(私達の年代)は、ちゃんとした学校教育を受けられなかったので、たまに計算違いはありますけれど。)
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オリーブ漬を持つヴィトリアさん |
小さな市場なので馴染みのお店も出来てきました。 昨年の秋にオリーブを自分で漬けてみようと市場に出かけた時、塩分が少なく美味しいオリーブの漬物を売っている、しっかり者のヴィトリアさんに漬け方を聞くと「大きなオリーブの実はナイフで縦に四つ、小さな実には三つ切れ目を入れる。十日ほど毎日水を取り替えて灰汁出しをする。その後レモン・にんにく・ハーブを入れた塩水に漬け込む。」と教えてくれました。その後いつもイチジクやザクロを買うジルベルトさんの所でオリーブを買ったのですが、彼が「漬け方を知っているか」と聞くので「だいたいね」と答えると、他のお客さん
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ジルベルトさん |
傷をつけたオリーブを濃い塩水(馬鈴薯が浮く位の)に一週間ほど漬け込み、その後ハーブとにんにくを入れた薄い塩水に漬け込むのだそうです。彼の話を傍で聞いていたお客さんの一人が「駄目よ。塩水などに漬けて灰汁を出しては・・・」と言い始めます。事ほど左様にオリーブの漬け方は家々によって異なり、それぞれの人が自分の漬け方に強い自信を持っているようです。レストランで食事の前に出されるオリーブ漬けの味が店によって異なる理由がよく判りました。
黒のオリーブはヴィトリアさんに教えられた方法で、グリーンのオリーブはジルベルトさん流に漬け込んでみました。黒の方はまろやかで塩分控えめで丁度良い仕上がり、グリーンの方は少し塩味でした。どちらもまずまずの漬け上がりでしたが、自分が作ったものだけに大切にしすぎて、冷蔵庫の中でカビが生えてしまいました。なかなか難しい物です。 2007年1月( 孝江 )