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ポルトガル便り・19便  日本語になったポルトガル語

 西洋人が初めて日本にやってきたのは、1543年に鉄砲を持ったポルトガル人が種子島に漂着した時だと習った記憶があります。(試験前になると“鉄砲伝来以後は苦しみ”などと年代を暗記しませんでしたか?)その時から三代将軍・徳川家光によってポルトガル人の来航が禁止された1639年迄の約100年の間に、宗教や貿易を通じ日本はポルトガルからいろいろな文化を受け取りました。その結果日本に現在も残って使われている言葉があるという事は、とても面白い事だと思います。
 今でも日本語として日常的に使われている言葉の代表例は、パン(pào)・コップ(copo)・煙草(tobaco)でしょう。又ボタン(botà)・オルガン(orgào)・ビスケット(biscoito)なども、今でも両国の生活の中でよく使われている言葉だと思います。

(注)
1.ポルトガル語の黍の文字はアンとアウンとの中間的な発音です。ブラジルの代表的な町・サンパウロはSào Pauloと書き、聖なるパウロ様という意味です。その他の文字はローマ字読みをして下されば、概ね正しいと考えて結構です。
2.アクセントについて(1)a,e,oで終わる単語は、最後から二番目の音節に (2)a,e,oでは終わらない単語と二重母音で終わる単語は最後の音節に、アクセントが有る。(3)それ以外はアクセント記号を用いてアクセントを表す。
3.オルガンはこちらではパイプオルガンを意味するようです。昔日本でよく使われていた足踏みオルガンが欧州でも使われていたのかどうかは、不勉強でよく判りません。

 今の私達の生活ではもう使われていない懐かしい言葉の中にも、ポルトガルから入って来た単語が沢山あります。その代表例はシャボン(sabào)・羅紗(raxa)・ビードロ(vidro)でしょう。シャボン・ラシャは少し前の時代までは使われていたと思いますが、ビードロとなると私も森鴎外や芥川龍之介などの小説の中でしか知らない単語になってきます。ビードロが窓ガラスのような工業製品として発達した時に、名前もその国の言葉(glass―ガラス)となって一緒に輸入され、今となっては誰もビードロとは呼ばなくなったのではないでしょうか。私が小さい時に夢中になって遊んだビー玉は、恐らくビードロの玉という意味だったのでしょう。
 更にギヤマン(diamante)・カンテラ(candeia)・メリヤス(meias)・合羽(capa)・チャルメラ(charmela)などになると、若い方の中にはこれらの単語を使ったことがない方や、或いは日本語自身をご存じない方もいらっしゃる事と思います。メリヤスは伸び縮みする事から、漢字では莫大小と書くようですが、ポルトガル語のmeiasは靴下(複数形)の事です。いつの頃かは判りませんが靴下がこの種の布地で作られた事から、伸び縮みする生地を日本語ではメリヤスと呼ぶようになったものと思われます。現在ニットと呼ばれている布地の事は、ポルトガルではマーリャ(malha)と呼んでおり、日本語もポルトガル語も時代と共に変遷している事が判ります。
 さてポルトガルの修道士は日本へお菓子も持って来てくれたようです。信長や秀吉への献上品の中には南蛮菓子も記録されていると聞きます。長崎カステラの起源がポルトガルらしいという事は、多くの人にとって頷けることです。現在、ポルトガルでカステラの原型だろうと言われているお菓子はパン・デ・ロー(pào-delòjと呼ばれ、卵と砂糖とを一緒に泡立て小麦粉を加えて焼いた、日本のカステラよりも軽いお菓子です。また最中の原型だと言われているお菓子は、アベイロという地方のオーボス・モーレス(ovos moles・柔らかい卵の意味)という名前で、これは餡子の代わりに卵の黄身だけを何時間も煮詰めた物を詰めた、とても甘いお菓子です。
 日本でも私の母の時代には お菓子の事をボーロ(bolo)とも呼んでいたようです。金米糖(confeito)は日本の物と異なり角の無い形の物が多いようですが、キャラメル(caramelo)・コロッケ(croquete)と共に今でもこちらで親しまれている食べ物です。天麩羅の語源はtêmproだと思われ、これは調味料を意味します。バッテラの語源batelは小さな船を意味し、いずれも元もとの言葉が転じた形で日本語として定着していったものと想像されます。
 話は飛びますが、ポルトガルに旅行に来られた方は最初に「日本語の“此処”という言葉と“魚”という言葉とは、ポルトガルでは使わないほうが良いよ。」とアドバイスされます。cocô“うんち”の事ですし、sacanaは“恥知らずな”という意味の言葉ですが、更に“男娼”・“マスタベーション”等という意味にも使われるようです。
 今回インド洋での津波で沢山の被災者が出てしまいましたが、“津波−TSUNAMI”という言葉は、世界中で使われる数少ない日本語を語源とする言葉のようですね。ポルトガル語のニュースでもCNNやBBCなどの英語のニュースでも、皆TSUNAMIという表現で説明がされていました。震災国日本の歴史を物語る一面だと言えましょう。(2005年 1月 ・ 征二)

パン・デ・ロー(pào-delò)
金米糖(Confeito)
オーボスモーレス(ovos moles)









付録・

本文ではご紹介出来なかった単語も含め、日本語になったポルトガル語を一覧表でご紹介しましょう。

日本語        ポルトガル語
ボーボラ(かぼちゃ) abóbola
ザボン        zamboa
ビロード       veludo
更紗         saracà
カルサン(半ズボン) calçào
カルタ        carta
ブランコ       balanço
フラスコ       frasco
メリヤス       meias
バテレン       padre     
キリシタン      cristào   
クルス        cruz   
パン         pào     
コップ        copo      
煙草         tobaco     
ボタン        botào       
バッテラ       batel
オルガン       orgào
ビスケット      biscoito
シャボン       sabào
羅紗         raxa
ビードロ       vidro
ギヤマン       diamante
カンテラ       candeia
合羽         capa
チャルメラ      charmela
ボーロ        bolo
金米糖        confeito
キャラメル      caramela
コロッケ       croquete
天麩羅        temptêro

 
       
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