ポルトガル短信・その6 アソーレスを訪ねて(2) 2013年7月
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サンミゲル島は、牛乳・バター・チーズが美味しい事で有名です。牧草地は山の斜面にも多くあり、かなり高いところまで牛が上がって草を食べています。足腰の強い牛達です。緑の中(大陸のポルトガルでは、夏は雨が降らないので茶色です)で、ゆったりと座ったり寝そべったりしている牛を見ると、これぞ牛のあるべき姿だと思います。途中で牧童に連れられた牛の集団に出会い、バスは牛の後ろをのろのろと動かざるをえませんでした。
祖父母と参加の7歳のアントニオ君がコマを買いました。なんとかして廻そうとするのですが、コロコロと転がるばかりです。その姿を見ると昔、男の子だった人達の血が騒ぎます。我も我もと挑戦するのですが、どの人も上手く廻せません。そのうちに公園の管理をしている男性が買って出て、手のひらの上でコマを廻す技を披露しました。拍手大喝采。羨ましげに見る男性陣でした。大人にコマを取り上げられていたアントニオ君も、一度上手く廻せて歓声をあげました。コツを覚えると、後は上手に廻せるのですね。当分彼はコマ廻しに夢中になる事でしょう。
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楽しく旅が終えられたのはパワー溢れるガイドのベラさんの力が大きかったです。旅行の内容は朝8時30分から夕方7時30分までと、かなりハードな内容でした。熟年層も多いのですが、皆文句も言わずについてゆきます。自分達よりもっと大変なのは、ベラさんだという事を知っているからです。バスに乗っている間は、彼女はしゃべりっぱなし。早口のポルトガル語で説明してくれます。
4日目の夕方はさすがのベラさんも「皆さん、疲れたでしょうから少し眠りますか?」皆んなからは「そんなことは無い。歌を歌って。」という反応。立派な声で十番まで有る曲を歌ってくれました。繰り返しの部分は皆で合唱です。楽しさが伝わって来ます。 結局、彼女は声を出しっぱなし。昼食・夕食の席の気配りから、それは見事なもので、ガイドのプロです。参加者全員が彼女の健闘ぶりに感謝を表そうと、最終日に帽子が後ろの席から回ってきました。一家で5ユーロのカンパです。夕食前にベラさんを中心に立たせて、贈呈式です。 一人が感謝の言葉を述べ、一人が自作の詩の朗読をしました。皆さん、笑顔です。
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彼女の情熱を持った生き方に私達も感動し、何かお礼をしたいと前日に彼女の顔をスケッチブックに描いていました。それを写真立てに入れてプレゼントしました。ベラさんは予期せぬ事で大喜び。夕食の席から席へ「これ私よ」と披露して回ります。他の参加者達はそれぞれに「よくぞ、やってくれた!」と私達に頷き、にっこり。
運転手のジョゼさんは、これぞ運転のプロでした。バックミラーだけを頼りに障害物も何のその、車の後ろに目が付いて居るのかと思うほど見事に大型バスを操ります。彼にサンタクロースのナプキン入れを折って贈りました。一時間後に彼から私に封筒が手渡されました。中には絵葉書一枚と彼の自作の詩(3番まで)が入っています。彼は名運転手であり、即興詩人でした。粋な事をしてくれますね。
2013年7月 【 孝 江 】