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ポルトガル短信・その4 ウオルター氏の引退 2013年6月

 今回は5ヶ月間ポルトガルに滞在するのですが、そこでやりたい事の一つが、以前歌っていたサンブラス合唱団に又参加する事でした。この合唱団には暖かい日差しを求めて他の欧州の国々から移り住んで来た人が多く、ポルトガル人は数人しか居ません。指揮者のウオルターが昭和14年生れのドイツ人なので、同年代だしドイツ音楽を愛するなど共有するものが多く、ポルトガル滞在10年間で一番の友人(日本人を除き)になっています。その彼が、年を取ってきた事を理由に、この6月のステージを最後に、指揮者の活動を辞める事になりました。彼のサヨナラ公演なので、私は数回の練習にしか参加していないのですが、無理をしてステージに参加させて貰いました。


 演奏会は2日連続で行われ、初日は公民館で世俗的な音楽です。イタリアの古い歌・ブラームスなどドイツの歌・マドリガルなどイギリスの歌・そしてポルトガルの民謡です。そして2日目は、教会で宗教的な音楽。土曜日なので夕方からミサが行われ、音楽会の始まりは夜の9時半からでした。バイオリンが2本・チェロそしてオルガンの伴奏で、17世紀の作曲家・ブクステフーデのカンタータ。そしてバッハ・モーツアルトなどの曲目です。


 ウオルター氏はオルガンと古典音楽を学び、学校の先生と教会のオルガン奏者兼合唱指揮を続けて来た人です。合唱では、基本的には英語を使って進めてくれますが、興奮してくると矢張りドイツ語に切り替わってしまい、こちらはチンプンカンプンになります。生真面目で直球一本槍のウオルターの脇で、奥さんのパオラは肝っ玉母さんタイプ。トレードマークの朗らかな笑い声で、合唱団の明るさの源泉になっています。


 最近の合唱団のもう一つの話題は、60歳代のカップルの誕生です。久しぶりに参加した練習が終わった後で、アルトのマーガレットが近づいてきて、「セイジ、私は新しいパートナーを見つけたのよ。」と恥ずかしそうに、しかし嬉しそうにテノールの男性を紹介してくれました。その後の外野席の解説によると、経緯はこんな話だったようです。

 この合唱団が有るサンブラスの町は丘陵地帯にあり、住民の半分位は町の周辺に住んでいます。この数年、雨が降らない日が多く山火事に悩まされています。昨年も山火事が激しく、被害を被った人達を助けるボランティアグループが出来ました。この活動を通じて二人は知り合い、イギリス人男性とドイツ人女性のカップルが誕生したそうです。二人とも数年前に長年の伴侶を病気で失い、一人暮しの生活をしていたとの事です。孝江が所属している絵のグループも含め、結婚はしていないが生活を共にしている二人組が沢山います。「私のパートナーのxxです。」という紹介の言葉は、ごく普通の会話になっています。それにしても70歳に近い女性が、初々しい眼差しで彼を見詰めている姿は、とても微笑ましいものでした。

 なお合唱団はこのまま夏休みに入り、9月からは新しい指揮者(ポルトガル人の声楽家)のもとで再出発するそうです。 

                                                 【 征 二 】2013年6月
 
           
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